~印刷業を引き継ぎ、法人化&動画制作事業で再構築~
「親父の仕事、時代遅れじゃない?」
そう思っていたのは、東京でフリーランス動画クリエイターとして活動していた健介さん(32歳)。
しかし、体調を崩して廃業寸前となった父の個人事業「佐々木印刷所」を目の当たりにし、地元に戻る決意をした。
かつて名刺やチラシ印刷で栄えた町の小さな印刷所。
受注はFAX、帳簿は手書き、売上は減少の一途。
「でも、紙が全部なくなるわけじゃない。価値のある印刷もある。」
そう考えた健介さんは、父の事業を継ぎながら、自身の動画スキルを融合させた“印刷+映像”のハイブリッド事業に挑戦する。
事業承継補助金で「法人化+業態追加」を実現
健介さんが活用したのは事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用枠/11次公募)。
個人事業から法人化し、かつ新たな事業(動画制作)を開始するための支援を受けた。
活用した専門家と支援内容
【専門家活用(総額 約240万円)】
- 中小企業診断士:法人化に伴う事業計画書策定(報酬 50万円)
- 司法書士:法人設立手続き、契約整備(報酬 30万円)
- 税理士:法人の会計・資金管理体制整備(報酬 40万円)
- ITコンサル:業務クラウド化、Adobe系ツール導入支援(報酬 70万円)
- Web制作会社:印刷+動画PRサイト制作(報酬 50万円)
補助率3/4 → 実質負担 60万円
補助金対象となった主な経費
- 動画編集用PC・撮影機材一式:100万円
- 業務用オンデマンド印刷機:180万円
- スタジオ用簡易防音ブース設置:40万円
- ロゴ・ブランディングデザイン:30万円
- 動画付きWebパンフ制作:50万円
→ 合計:約400万円(専門家報酬含むと640万円) → 補助金:約480万円を獲得
法人化で見えた「新たな信用」と可能性
法人化後は、地域金融機関の支援が受けやすくなり、補助金以外にも創業融資(制度融資)を活用。
同時に、行政のPR動画や商工会議所のパンフレット制作など、“印刷+映像”の一括受注が増加。
父の技術を活かしながら、自分の得意分野を足していく。
それが“継ぐ”ということだと実感したという。
親子事業承継のリアル
「親父とのやりとりはぶつかることも多かった。でも、互いに認め合える瞬間がある。」
健介さんは事業の中で父の仕事の凄さに気づき、
父も息子の感性と行動力に驚いていたという。
個人事業の承継にも補助金は活用できる
「法人化してないから対象外では?」と思われがちだが、事業承継補助金は個人事業主からの承継にも対応可能。
特に、親子・親族間の承継や、M&Aで個人事業を譲り受けたケースなども対象となる。
ポイントは「計画と専門家」
- 法人化や事業追加などの明確な方向性があること
- 事業承継後の成長戦略を可視化する事業計画があること
- 専門家の支援により実行性と根拠を高めること
まとめ:個人から法人へ、“挑戦”が承継を意味あるものに
印刷所から始まり、動画制作と融合し、新たな地域メディアを生み出すまでに成長した佐々木さん親子。
事業承継は“終わらせないための手段”ではなく、“始め直すための選択”。
補助金は、その挑戦をカタチにするための強力なパートナーとなる。